るりとうわた

日常をつづる

映画「アンダー・コントロール」(ネタバレ)

‎98分‎‎ - ドキュメンタリー‎
監督: フォルカー・ザッテル -
脱原発“先進国ドイツのフォルカー・ザッテル監督が、徹底的リサーチと3年にも渡る取材、撮影で原子力発電所施設の内部と作業の実態に迫ったドキュメンタリー。管制室、原子炉内部、放射性廃棄物貯蔵庫、原発解体作業現場など興味深い映像が満載。最新技術や原発産業の現状なども客観的な視点から捉え、原子力の抱える問題を浮かび上がらせる。
http://www.imageforum.co.jp/control/

ストーリー
ドイツの原子力発電関連施設を3年間にわたり取材したドキュメンタリー。原子炉建屋の内部や精密機器であふれた操作室をはじめ、放射性廃棄物の貯蔵施設、巨大な廃墟と化した原発とその解体作業の様子、原子力にかかわる人々の日常などを捉え、“原子力のゆくえ”を冷静に見つめていく。

キャスト・スタッフ
キャスト:

監督: フォルカー・ザッテル
製作: スザン・シムク、ヨルク・トレントマン
脚本: フォルカー・ザッテル
撮影: フォルカー・ザッテル
編集: シュテファン・クルムビーゲル、フォルカー・ザッテル


音楽もない、説明もない、主張もない、ただあるがままの今のドイツの姿、今のドイツ原発関連施設の様子が映し出されます。
私にとっては見ることの出来ない世界の展開で、目を見張るばかりでした。
最新鋭の機器の部屋は近未来の映像、または空想の世界(まるで劇画)とも感じるぐらい最新式でした。
その原発施設で、人とは過ちを犯すものとして、コンピューターで手順の過ちにロックをかけ、4重の安全を確保してあるという、最新鋭の原発施設の映像が展開します。

ドイツで1950年代から核の平和利用を目的とした開発が始まった原子力エネルギーは、「夢のエネルギー」ととらえられていました、それが1970年代には原発反対論争がおき、国民の投票で原発賛成が49,5%、反対が50,5%となったそうで、チェルノブイリ原発事故後、原発の段階的廃止の方向がとられます。
そして廃炉にされていく過程が映し出されます。
防護服に身を包み放射能に汚染された炉の解体、汚染された冷却水のドラム缶が地中深くに貯蔵され、廃炉にしてもそのドラム缶の数が着々と増える様子。
そして一度も使われることがなかった施設が子供の遊園地として活用されている映像が出ます。
それが、とても皮肉な映像に見えるのですが、このまま原子力に頼り、子供たちの未来を摘み取るのか、それとも原子力を廃止して子供たちの未来あるほうを取るのか、と問いかけているようにも感じました。

映像を見ながら、色々と思考します。
設備も最新鋭ですが、政治も進んでいると感心しました。
そしてこの映画製作の後ですが、ドイツのメルケル政権は福島での原発事故をきっかけに、2022年末までにすべての原発を停止させることを決定します。
チェルノブイリ原発事故については、原子炉が旧ソ連の古いものであったためという見方があり、日本の原子炉でああいう事故は絶対起こらないというのを、私などはてっきり信じ込まされてきました。
ドイツにとってもそれは他所事であることに変わりはなかったはずです。
それでも他人事でなく、自分のこととして捉えられた、政治の良心を感じることができます。
そして福島の事故後は即全廃という決定です。
福島は日本の原発です。
その日本の地にあっても、まだ他所事のようでおれる日本の政治が不思議でなりません。
(一応)先進国である日本で、原発安全神話は崩れてしまった、今日のニュースでも、福島市大波地区産のコシヒカリ(玄米)から国の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウム630ベクレルを検出したと発表し、政府は同地区のコメを出荷停止にする検討を・・・。
一度安全宣言が出た後にということで、被害も大きいですね。
これ以上の被害者を出さないためにも、狭い日本に、地震国の日本に、安全のために原発はいりません。
原発が危険だと証明されたのですから、国として早く新しいエネルギー政策の転換を進めて欲しいと思います。
どうしてこんなに遅れているのか?どっちを向いて政治がおこなわれているのか?と、疑問に感じてしまいます。


メガホンを取ったのは1970年ドイツ生まれの監督フォルカー・ザッテルさんです。
パンフにもインタビューはあるのですが、こちらのほうが福島に触れているので、 [シネマトゥデイ映画ニュース]より引用します。

 ザッテル監督は、本作を通じて、「原発とはどういうものなのか」を、反対派でも推進派でもない立場から冷静に映し出した。映画には、ドイツの原子炉立屋の内部、制御室、原子炉の様子、廃炉が決定した原発の解体作業の様子……と通常では絶対に撮影することができない風景が映し出される。施設側との粘り強い交渉を続けた結果、必死の思いで撮影権を手に入れたという監督を待ち受けていたのは想像を絶するような過酷な撮影だった。「年に一度のタイミングで、原発は閉鎖されて保守点検されるんだけど、僕らはこのタイミングで撮影をしたんだ。高濃度の放射性物質を避けるために、防護服を着込み、手袋を二重につけた。撮影用具一式も汚染されないよう、絶対に下に下ろしちゃいけない、といわれていたから、暑くて暑くて空気が悪い。原子炉に近づくにつれ、どんどん暑くなって、中は40度を超えたんだ。地獄のような状態だったよ」と、当時を振り返った監督は、テレビのニュースで福島第一原発の作業の様子を見るたびに、胸が張り裂けそうになったという。「僕らは実際にあの場所にいたから、あそこがどれほど地獄のような場所かよく分かる。どれほど暑いかを知っているので。原発で働く作業員というのは、ドイツでも社会的に立場が弱い人が多い。日本でもそうなのかな? 知識の高いエンジニアたちが、あそこで作業員として働いているとは到底思えない」

 ドイツの原子力発電所を、3年にわたり撮影し続けてきたザッテル監督は、福島第一発電所の印象をどう受けたのだろうか?「福島第一原発は、ニュースを通じて何度も見た。正直な意見を言っていいかい? 最初に内側の様子を見たとき、あまりの古さに衝撃を受けたよ。結局、原発は一度建てたらそこから新しくしたりするのはとてもお金がかかる。ドイツにも古い原発はたくさんあるよ。でもさすがにそこでの撮影は断られてしまった。やはり、さまざまな欠陥があるのではないかと思ったよ」と話す。

 本来は原発推進派だったドイツのメルケル政権は、福島第一原発事故のあと6月には、2022年までに原発全17基の廃止を閣議決定した。ザッテル監督は、福島第一原発の事故が、ドイツ国民に与えた影響の大きさを語った。「チェルノブイリの事故が起きたときは、ロシアの原発は古いからこうなった……という意見が多かった。その反対に、日本はどこよりも技術的に進歩している国という印象が強い。その日本でこういった事故が起きてしまったから、福島第一原発の建屋が爆発した映像を観たとき、ドイツ国民のほとんどが不安に駆られたんだ。推進派のひとたちも、みんながこんな事故がドイツで起きたら大変だ! と、多くの人が意見を変えた。特にメルケル首相はもともと物理学者だから、彼女が推進派から立場を変えたのは大きかったね」

 本作を作る上で、あくまで冷静さを欠くことのないように務めたというザッテル監督は、「反対派でも推進派でもない、新たな視点で原発を捉えることで、この映画を観た人がこれから先、原発をどのようにしていかなければならないかをきちんと議論することができるように務めた。この映画を観れば、原発の中でどんなことが起きているのかを冷静に感じられると思うよ。映画に出てくる原発の風景を、恐怖に感じる人もいるし、テクノロジーに心酔するひともいる。ドイツは、昔から家庭の中でも大論争が起きるぐらい、ひとびとが原発問題を語り合ってきた。日本でも、この映画を観てぜひきちんと原発と向き合って欲しいと思うよ」と、メッセージを送った。