るりとうわた

日常をつづる

「海辺のカフカ」

海辺のカフカ」は言わずと知れた村上春樹の作品です。
その作品を蜷川幸雄さんが演出して舞台になるというので、昨日埼玉県にある彩の国さいたま芸術劇場まで行ってきました。
蜷川さんもタフですね、年間何本の舞台演出をされていることか・・・
昨日も音響ブースの横で、カーテンコールの時に出演者に拍手を送っておられたので、そこでご覧になっていたと思います。
この本の上巻は数年前に読んだのですが、リフォームするときに物置から出てきて、そうだ下巻を読もうと思い、BOOK OFFで求めました。
1年と少し前のことなので内容もよく覚えていますので、どういう舞台になるのか興味がありました。
会場に着き、驚いたのは1部が1時間40分、休憩20分、2部1時間55分というほぼ4時間という長丁場です。

[キャスト]
カフカ柳楽優弥/佐伯:田中裕子/大島:長谷川博己/カラス:柿澤勇人/さくら:佐藤江梨子/星野:高橋努カーネル・サンダース:鳥山昌克/ナカタ:木場勝己/ほか

[ストーリー]
主人公の「僕」は、自分の分身ともいえるカラスに導かれて「世界で最もタフな15歳になる」ことを決意し、15歳の誕生日に父親と共に過ごした家を出る。そして四国で身を寄せた甲村図書館で、司書を務める大島や、幼い頃に自分を置いて家を出た母と思われる女性(佐伯)に巡り会い、父親にかけられた〝呪い〟に向き合うことになる。一方、東京に住む、猫と会話のできる不思議な老人ナカタさんは、近所の迷い猫の捜索を引き受けたことがきっかけで、星野が運転する長距離トラックに乗って四国に向かうことになる。
それぞれの物語は、いつしか次第にシンクロし…。


まだ始まったばかりなので、ネタバレにならないように・・・
ただ結構原作に忠実で、要点をかいつまんであるので、誰の脚本かというと、これが逆輸入ということでした。
蜷川さんのインタビューがあるので書いておきます。

[セカイのムラカミに、セカイのニナガワが挑む。村上春樹のベストセラー小説を原作にした舞台「海辺のカフカ」(ホリプロ企画制作)が5月3日から、さいたま市彩の国さいたま芸術劇場で上演される。演出の蜷川幸雄は「村上作品のイメージに追いつけるよう、演劇的想像力を総動員する」と話す。

長編『海辺のカフカ』は2002年刊行。英訳が出た05年にはニューヨーク・タイムズの「年間ベストブック10冊」に選ばれるなど、海外でも評価が高い。15歳の誕生日に家出したカフカ少年と、猫と会話できるナカタ老人の冒険を並行して描く。やがて2人の物語はシンクロしてゆく。

蜷川は「この小説は、迷宮のように筋が錯綜(さくそう)し、多義的であり、時系列も飛んでゆく。整理してしまうと物語の面白さが消える。そこで、森、人物、バス、トラックといった全てのキーワードを歪曲(わいきょく)した形で最初に出してしまおうと思う」と演出の狙いを語る。

脚本は、08年に米シカゴで初演された舞台「海辺のカフカ」(フランク・ギャラティ脚本・演出)を邦訳したもの。いわば逆輸入で、平塚隼介の訳は村上らしい文体になっている。

「戯曲にするのは難しいし、村上さんの許可も出ないと思っていたが、ギャラティ版を読んだら上手に構成してあるので上演を打診し、許可を得た」という。

二つの物語、現実と幻想が重なる小説だけに、舞台美術(中越司)も工夫する。「生々しく描かず、あらゆるものを透明なボックスに入れ、フィルターを通して提示する。それを動かして、時間や場所を交錯させる。村上さんの文体の透明感も醸しだせると思う」

どれだけ演劇的特徴を生かせるか、巨大な試験を受けているようだとも話す。「培ったありとあらゆる手法を使って、文学と拮抗(きっこう)したい」(小山内伸)

「生々しく描かず、あらゆるものを透明なボックスに入れ、フィルターを通して提示」この効果はありましたね、パズルのように動かすことで、本では順番にしか読めないものが、同時間帯の2つの違う場面を並べて見ることが出来ました。
村上氏の脳内パズル、一歩を踏み出す前の長い迷路遊びを表しているようでもありました。

蜷川さん的には父殺し(今回は精神的に)、そして母恋し(マザコン)という傾向の作品が多いように感じました。