るりとうわた

日常をつづる

最年長の芥川賞に最年少の直木賞

昨日16日に、第148回芥川・直木賞日本文学振興会主催)の選考会が、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞に史上最年長となる黒田夏子さん(75)の「abさんご」(早稲田文学5号)、直木賞に平成生まれでは初となる朝井リョウさん(23)の「何者」(新潮社)と、安部龍太郎さん(57)の「等伯」(日本経済新聞出版社)が選ばれました。
黒田さんの受賞年齢は1974年に61歳で受賞した森敦さんの記録を大きく更新、朝井さんは男性作家として最年少。安部さんは19年ぶり2度目の候補で受賞を果たしたそうです。贈呈式は2月下旬、東京都内で開かれるそうです。

70歳を過ぎても文章が書けて、芥川賞までいただけるなんて、年配者の希望の星だわ〜と、思ったのですが・・・
黒田さんは、実は5歳で物語を書き始め、すでに70年という筆歴があり、当然只者ではありませんでした。


芥川賞を受賞した黒田夏子さん

 「今更いただくのも…とたじろいでいる。縁がなさそうだ、と何十年もあきらめていたから」。控えめな言葉に、長い雌伏を経ての深い感慨がにじむ。

 筆歴はじつに70年。4歳のときに結核で母を亡くし自身も自宅療養を強いられ自然と読書に没頭した。はじめて物語を書き上げたのは5歳のときだった。中学の国語教師や校正者を務めながら10年で1作を書き上げる地道な研鑚(けんさん)が昨年の早稲田文学新人賞受賞でようやく実を結んだ。

 「言葉にできない体験を自分の言葉にしたいという気持ちが創作のエネルギー」。受賞作にも自らの経験が投影されている。母が他界し、父とともに残された娘はやがて一人家を出る…。断章形式の中に、戦前戦後を生きた家庭の記憶が浮かんでは消える。「あまり向き合いたくないことも多くて避けてきたけれど、一度は書かないと、と。時間がたったからこそ書けたのかもしれない」

 終戦を迎えたのは8歳のとき。旧かなづかいを学んだ世代だ。「言葉は本当によく変わる。『元へ、元へ』とたどって、あらゆる制約を取り除くことで普遍的な言葉に出合える」。受賞作の自由なスタイルはそんな思いの実践でもある。

 選考前、「とにかく自作を一冊でも本にしたい」と話していた。受賞作を収めた人生初の単行本に「芥川賞」という願ってもない肩書がつくことになった。暇を見つけては立ち見席に足を運ぶ歌舞伎ファン。東京都内で一人暮らし。(海老沢類)

冴えている人はいくつになっても冴えているし、ボケる人はきっとボケるのでしょうね。
予防法があればいいのですが、まあ賞を取った作品ぐらい読んで、ボケ防止にしようと思います。(笑)

 ◇「abさんご」 史上最年長「新人」

abさんご

abさんご

 黒田さんは学者の家庭に生まれ、5歳で物語を書き始めた。幼時から「『書く』ことが自分の第一義の仕事だと思っていました」。

 早稲田大卒業後、教職、校正業などの傍ら、10年に1本のペースで小説を執筆してきた。長く発表の機会はなかったが、70歳を超えて「誰かに読んでもらいたい」と、「abさんご」で早稲田文学新人賞に応募。同賞に続いて芥川賞を射止めた。

 受賞作は全編横書きで、カタカナと固有名詞、代名詞を排した前衛的な形態をもつ。音楽的な言葉のつながりが多様なイメージを喚起しながら、昭和のある親子の半生を描く。

 選考委員の堀江敏幸さんは「横書きにすることで平仮名の荒々しさを出すなど洗練された手法が、物語と混然一体となっているところが魅力」と評した。75歳での受賞については「年齢と『新人』は全く無関係。むしろみずみずしいという意見さえあった」と述べた。【棚部秀行】

 ◇「何者」 23歳、初の平成生まれ

何者

何者

 朝井さんは、初の平成生まれ▽男性作家として最年少(第8回、大池唯雄さんの30歳を抜く)▽全体でも2番目の若さ(第11回、堤千代さんの22歳に次ぐ)−−と、記録ずくめの快挙を果たした。

 受賞作は、就活(就職活動)する大学生5人の姿を描いた長編小説。自分が「何者」なのかに悩む若者の光と闇をあぶり出した。

 ◇「等伯」 2度目の候補で

等伯 〈上〉

等伯 〈上〉

 安部さんは福岡県生まれ、久留米高専卒。地方公務員を経て90年にデビュー。05年、「天馬、翔(か)ける」で中山義秀文学賞を受けている。直木賞は94年以来、候補2度目での栄冠。営々と歴史小説を書いてきた作家に光が当たった。

 受賞作は安土桃山時代の絵師、長谷川等伯の生涯を描いている。苦難の末に傑作「松林図屏風(びょうぶ)」を仕上げる主人公の「モデルの半分は自分自身」という。

朝井リョウさんの「何者」も面白そうですね。
安部さんの「モデルの半分は自分自身」という言葉にも惹かれます。