るりとうわた

日常をつづる

シアターコクーンで観劇

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先月はヒカリエのオーブでの観劇でしたので、渋谷駅の東側でしたが、今回は東急デパート本店脇文化村シアターコクーンでの観劇でした。

前回は有楽町の映画館から駆け付けたのですが、今回も寄り道をしたので、有楽町線から半蔵門線の乗り換えになりました。

私の知っている東京は、劇場近辺ばかりです。(笑)

シアターコクーンは通い慣れた劇場ですが、半蔵門線の渋谷駅はヒカリエ近辺なので、忠犬ハチ公の像を探して、地上に出なければいけません。

渋谷の地下道はずいぶん大きくて長くなりました、出口を間違えてウロウロしましたが、地上でウロウロする方が距離があって大変でしょう。

ようやく真反対の109の下に着きました。

そこから坂道、道玄坂の方向かな、東急デパートの前の上の写真のクリスマスツリーまで来ました。

そのデパートの裏側が、東急文化村Bunkamura)です。もう開館して30周年だそうです。そんなに経ったのですね。

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Bunkamura入り口にある花屋のショーウインドウの中もクリスマス仕様で可愛いです。

そんな開館30周年を記念した演目が、昨日観劇の「民衆の敵」でした。

 

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民衆の敵』は、近代演劇の父とも称されるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが1882年に発表した作品。『ペール・ギュント』『人形の家』『ヘッダ・ガーブレル』などに並ぶ代表作の一つだ。

 

 

アメリカでアーサー・ミラーによって翻案されてブロードウェイでも上演されてきた作品だが、今回は広田敦郎が新たに戯曲を翻訳して上演に臨む。

 

 

演出はロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)出身のジョナサン・マンビィ。2016年に絶賛を浴びた『るつぼ』でジョナサン・マンビィとタッグを組んだ堤真一が出演するほか、安蘭けい谷原章介大西礼芳外山誠二、大鷹明良、木場勝己段田安則らが出演する。

 

 

 

STORY

 

 

温泉の発見に盛り上がるノルウェー南部の海岸町。
その発見の功労者となった医師トマス・ストックマン(堤真一)は、その水質が工場の廃液によって汚染されている事実を突き止める。汚染の原因である廃液は妻カトリーネ(安蘭けい)の養父モルテン・ヒール(外山誠二)が経営する製革工場からくるものだった。トマスは、廃液が温泉に混ざらないように水道管ルートを引き直すよう、実兄かつ市長であるペテル・ストックマン(段田安則)に提案するが、ペテルは工事にかかる莫大な費用を理由に、汚染を隠ぺいするようトマスに持ち掛ける。一刻も早く世間に事実を知らせるべく邁進していた、新聞「民報」の編集者ホヴスタ(谷原章介)と若き記者ビリング、市長を快く思っておらず家主組合を率いる印刷屋アスラクセン(大鷹明良)は、当初トマスを支持していたが、補修費用が市民の税金から賄われると知り、手のひらを返す。兄弟の意見は完全に決裂し、徐々にトマスの孤立は深まっていく。カトリーネは夫を支えつつも周囲との関係を取り持とうと努め、長女ペトラ(大西礼芳)は父の意志を擁護する。そしてトマス家を出入りするホルステル船長(木場勝己)もトマスを親身に援助するのだが……。
トマスは市民に真実を伝えるべく民衆集会を開く。しかし、そこで彼は「民衆の敵」であると烙印を押される……。

 

 1882年の作品なのに、今日的問題を含んでいて、ちっとも色褪せない、とても刺激的な内容でした。

主人公はもう膨大なセリフ量で、演説まであります。

その堤真一さんが、インタビューでこう答えられています。

 

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他人の意見に惑わされず、自分の頭で考え、判断しているのか。今の日本に生きる僕らにとっても他人事とは思えないテーマに貫かれた戯曲です。「民衆の敵」と糾弾されてしまうトマスが難しいのは、単純な勧善懲悪モノにおける“正義の人”ではない点です。トマスの異常なまでの熱さには稽古しながら青いなとも思いますが、誰にも惑わされずに自分の生き方を貫き通せる人間なんて、現実にはなかなかいませんからね。他人の話をうのみにするのではなく、自分なりの疑問を持つことがすごく大事だと思うんです。ひとかたまりの“民衆”になっていないか、観てる人もハッとさせられる、そんな舞台になればと思います。

 

 

同感です。

民衆への演説で、「民衆の愚鈍こそが世の中を堕落させる」と演説します。

それに対して、総スカンをくらい、そのストックマンの言葉に強い反感をもった民衆はその場にいた全員が彼を「民衆の敵」だと叫ぶのでした。

その後、市民から敵視されたストックマンは、汚染された温泉によって観光者がもたらす富で栄える町の片隅で身を潜めて暮らすことになります。

そして最後の言葉、

「世界で最も強い人間は、一人で立っている者だ」と言う。

その家に、民衆からの無数の石つぶてが飛んできて、終演となります。

 

痛烈なこの社会の皮肉を感じました。

民衆は利口じゃないと、自分で自分の首を締めているのですね、しかも気づかずに・・・

演劇的に面白いのか?と言うと、途中から、これは難しい問題を取り上げたな~と、感じますし、この家族は孤立を深めていく・・・

ただ30周年を迎えての意欲作だと言うのは伝わりました。

お安いコクンシートの席にしたので、2階席のサイド席で、舞台の半分以上が見えませんでした。8割ぐらいの入りだったから、正面席がまだ空いていました。今度は真ん中で観たいと思いました。

 

ついか

 

 

中国では

「近代演劇の父」とも称されるノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの代表作の一つ『民衆の敵』の上演を予定していた中国・江蘇省南京市の劇場は突然、「9月13日と14日の上演を中止する」と発表していたことが明らかになった。

 

米紙「ニューヨーク・タイムズ」は「中国当局は演劇が中国の環境汚染問題につながる敏感なテーマとみなして公演を中止させた」と伝え、世界的な名作も当局の検閲にひっかかり、表現の自由がいとも簡単に奪われたなどと批判している。

  中国での公演はドイツの代表的な劇団である「シャウビューネ劇場」が上演。同劇団は2012年から世界各地で『民衆の敵』の上演をしており、今年も9月6日~8日の日程で、北京市の国家大劇院(国立劇場)で公演を行った。

  公演初日の上演後、出演者と観客の交流会が開かれ、出演者から「環境汚染の真相を公表したいという主人公の考えに賛成するかどうか」という質問が出ると、「中国にも環境汚染問題がある」「(中国に)言論の自由がないことが大きな問題だ」との声が多数上がったという。

  その後、劇団側には国家大劇院側から「翌日から交流会は中止するように」との指示が伝えられ、2日、3日目の交流会は行われなかったという。
 さらに、13、14日に南京市で予定されていた「民衆の敵」公演について、南京市の劇場側は8日、ドイツ側に電話で「舞台設備が不備」などとして「上演を中止したい」と伝えた。10日には公演チケットの販売が中止となり、すでに購入した観客に対して払い戻しがなされたという。

  劇団のファイト総監督は米政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカVOA)」の取材に対して、2014年以降北京、天津、上海など中国各地で公演を行ってきたが、「上演の中止は今回が初めてだ」と語ったうえで「『舞台設備がなくても上演できる』と劇場側に提案したが、劇場側は『当局の判断で中止が決まったので、どうしようもない』と言っていた」と明かした。

  駐中国ドイツ大使館は中国文化省に対して、公演中止について遺憾の意を表明VOAは「136年前に創作されたイプセンの名作『民衆の敵』が中国の現状と重なり、中国当局の警戒心を高めてしまったようだ」と指摘している。