るりとうわた

日常をつづる

観劇「赤道の下のマクベス」


先日のことですが、「赤道の下のマクベス」を新国立劇場の小ホール(写真)で観劇してきました。
最近特に年金生活になってから、安いA席で観劇することが多く最後部の席は、展開の緩いお芝居は、しばし置いてけぼりを食います。
やはり、昔から芝居はかぶりつきで、と言われるぐらい、前の席との違いは大きいです。
そうしたら、新国立劇場でのセット券と言うのが発売されて、3セットで1割引きと言うのがありました。
劇場券の割引と言うのも中々ありませんし、今特にこれを見たいと言うものもないので、席もえらべると言うので、3月、4月、5月と注文しました。
その選択の初日だったので、前から3番目の席で、ほぼ中央と言うのが取れ、後の2公演もこの席に準じるというものでした。

其の3月公演の演目です。
オペラ劇場はオペラやバレエをしていて1814席、5月は中劇場ですが、1038席で、今回の小劇場は450席で、もちろんマイクなしの生声です。それがいいのです。

新国立劇場鄭義信の最新作『赤道の下のマクベス

鄭義信はこれまで『焼肉ドラゴン』をはじめとする、戦後の影の日本史を描いた名作の数々を新国立劇場に書き下ろしてきた。今回描いたのは、終戦間もない1947 年、シンガポールチャンギ刑務所で、第二次世界大戦の BC級戦犯として収容されていた日本人と元日本人だった朝鮮人の物語。
捕虜への暴力や住民の殺害などの、残虐行為の命令者・実行者が BC級戦犯の対象となり、そこには日本人だけではなく、朝鮮や台湾出身の捕虜監視員もいた。メディアなどでは数多く取り上げられている A 級戦犯についてではなく、その影で戦争の不条理さを押し付けられたBC 級戦犯にフォーカスした作品で、キャストには、鄭義信作品には初登場の池内博之平田満をはじめ骨太の俳優陣が揃っている。

【作・演出】鄭義信
【出演】池内 博之・浅野 雅博・尾上 寛之・丸山 厚人・木津 誠之・チョウ ヨンホ・岩男 海史・中西 良介・平田 満


【ものがたり】
1947年夏、シンガポールチャンギ刑務所。

死刑囚が収容される監獄・Pホールは、演劇にあこがれ、ぼろぼろになるまでシェイクスピアの『マクベス』を読んでいた朴南星[パク・ナムソン]、戦犯となった自分の身を嘆いてはめそめそ泣く李文平[イ・ムンピョン]、一度無罪で釈放されたにも関わらず、再び捕まり二度目の死刑判決を受けるはめになった金春吉[キム・チュンギル]など、朝鮮人の元捕虜監視員と、元日本軍人の山形や黒田、小西など、複雑なメンバーで構成されていた。

BC級戦犯である彼らは、わずかばかりの食料に腹をすかし、時には看守からのリンチを受け、肉体的にも精神的にも熾烈極まる日々を送っていた。

ただただ死刑執行を待つ日々......そして、ついにその日が訪れた時......。

【囲みインタビュー】

赤道の下のマクベスフォ
鄭義信池内博之平田満


この公演の初日を迎える前日、プレス向けフォトコールが行われ、囲みインタビューに作・演出の鄭義信、パク・ナムソン役の池内博之、元日本軍人の黒田役の平田満が登壇した。


池内博之
早く幕が開いて欲しい気持ちでいっぱいです。「戦犯」という重いテーマを扱った作品なんですが、お互いの友情、笑いや涙など色々な要素がたくさん詰まった作品です。俳優陣全員がイキイキと芝居をしているので、そこが見どころです。本当にいい作品だと思います。初めて台本を読んだ時はおもわずカフェで泣いてしまったくらいで(笑)。絶対に楽しんでいただける作品になっておりますので、ぜひお越しください!


「ちょっぴり緊張を……いやずいぶん緊張してるかな(笑)」と言う黒田役の平田は、歴史上の出来事をベースにした本作を「普通の人たちの視点に立ったお話」と分析。続けて「普通だけど個性的な人たちが悶え苦しんだり、笑ったり、バカなことをやったりする」と作品の魅力を語り、自身と池内の役どころについては「池内くんはカッコいいですが、僕はそこにくっ付いている汚いジジイ」と茶目っ気たっぷりにコメントした。また平田は登場人物が全員男性であることにも言及。「バカなことばっかりやってる彼らは男子中学生みたいで。そこがかわいく、魅力的に見えたら」と見どころを紹介した。


ドキドキです」と胸の内を明かすのは鄭。第二次世界大戦を背景とする本作については「BC級戦犯を描いた厳しい話ですが、その中でも人と人のつながり、友情や愛情など深い人間のつながりを観ていただければ」とアピールした。また「素敵な俳優さんに恵まれた」と言う鄭が「池内さんの役は死刑囚ですが、ポジティブな役割を担うことになるので『もっとかわいく』とか『そこはもっと笑かしてくれ』みたいな無茶ぶりにいろいろ応えてもらいました。平田さんにも無茶ぶりしましたが、真摯に応えてくれて……申し訳ない(笑)」と稽古を振り返ると、池内と平田は口々に「楽しいですよ!」と鄭に笑顔を向けた。

前から3列目の自分の席に着いたら、舞台の高さと同じ位置に椅子がある状態で、あら嫌だわ、舞台から丸見えと言う状態で緊張します。
ただ前2席の方が座ると、胸の位置まで隠れるのでほっとしました。
それに演者の方は舞台中央から後方を見て演じられるから、目が合うこともないでしょう。
それにしてもまるで自分も舞台上に居る感覚でした、かぶりつきどころか入り込みです。(笑)
下の写真+1名が総出演者で、9名の男性による、2幕一場の舞台でした。

作・演出の鄭義信氏の”戦争を記録する舞台”と言うのになるほどな〜と感じました。私たち世代でさえ戦争を経験していませんが、まだ親や先輩の話で、その当時の様子や暮らしぶりを知ることが出来ますが、私たちの子や孫はずっと後なので、さらに戦争の話は遠いものになっています。
今生きている経験者の方は、多くのことを語り、子や孫に、伝えて欲しいと思います。
東南アジアに出されて日本兵の6割が餓死による戦死だということも、食べる物がなく草や昆虫を取り、さらにその現地の人や、イギリス兵の捕虜を鉄道建設に労働させ、暴力を振るったとBC級戦犯として裁かれているのです。
食料も薬もなく、その当地でのチフスコレラの病気の蔓延、なすすべもなかったこと等厳しい現実を、この下級兵に押し付けられている様は、今の森友問題と同じ匂いがします。
結局、上の者は、下に責任を押し付けて逃れようとしている様と被ります。
それに食料も後援支援も出さない日本軍の戦争の仕方に人権はないに等しいです。
昨年映画「ダンケルク」を見ましたが、第2次大戦中のドイツ軍に包囲される中、連合軍側が大撤退をするのに民間の船も協力する映画ですが、何名の命が兵隊が生き残ったと、数えるのです。民間人も大歓迎で帰還兵を迎えます。
普通ドッチボール合戦をしても生き残りの多いチームが勝ちですよね。
ところが、日本の戦は、死んで来いなんですよね、撤退なし、玉砕ですから、人権なんてあったものではありませんね。
記録する舞台は子孫のためにも是非必要だと感じます。

決して楽しい話ではありませんでしたが、死を前に、諍いや身分や国の違いに、溝があったりとギスギスしますが、平田満さんが、いい味をだされています。「もう〜やめんか」「また泣いたんか、目がよう腫れてる」とか、時にはみんなのお母さんになったり、お父さんや、兄代わりにパイプ役や和み役をうまく演じられ、あの映画、「蒲田行進曲」での「銀ちゃん、カッコイイ」と階段落ちをする大部屋役者のヤスを思い出したりしました。(笑)
また若々しいセリフ回しで、フットワークも軽く、まだまだいけます。
最後に、死刑に向かう池内さん役のパクを呼び止めて、最後に話がしたいと、自分にもこれぐらの年の息子がいると抱きしめて、「最後に言いたいことがあれば聞くから」と話し、パクは「おとうさん、ありがとう」とふるさとに思いを馳せるシーンは泣けました、余りにも戦争が非条理で。