るりとうわた

日常をつづる

観劇録2

6月は、新国立劇場2018/2019シーズン演劇公演 『オレステイア』 に行きました。

 前回、配役を全員、オーディションで決めた「かもめ」を見ましたが、これは裾野が広がるというか、芝居に厚みを増すので、芝居の濃度が濃くなり、有名人はいなくても、作品がいつまでも心に残ります。

色々と新しい挑戦をしているので、目を離せない新国立劇場です。

今回は行ってみて、3幕4時間20分の長い芝居とわかりました。日本初演です。

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 原作:アイスキュロス
作:ロバート・アイク
翻訳:平川大作
演出:上村聡史
出演:生田斗真(主人公)
音月 桂(次女)、趣 里(長女)、横田栄司(父)
下総源太朗、松永玲子、佐川和正、チョウ ヨンホ、草彅智文、髙倉直人
倉野章子、神野三鈴(母)

ドクターがオレステスに小さい頃の記憶を尋ねている。「二羽の鷲と一匹の野ウサギ」。野ウサギのお腹の中には子ウサギがいる―。

STORY

オレステスの父アガメムノンは戦争の勝利のために子殺しの神託を実行し、幼い娘イピゲネイアは生贄として殺害された。そして凱旋の日、夫の帰りを盛大に迎えたクリュタイメストラは、その夜自らの手で娘の仇である夫を殺す。

トラウマのために混乱するオレステスに、ドクターは真実を見るよう促す―。

ついにオレステスは父の仇である母クリュタイメストラを殺害。その罪をもって裁判にかけられる。

4時間20分座ると本当にお尻が痛くなりました。

それに難しい、演じる方もそうでしょうが、見る方も難しいです。

ポスターを見ていれば、ギリシャ悲劇を元にしてと言われれば、およそその後の中世時代位で描かれ、昔昔の話で済むのですが、これが現代に置き換えてあります。

昔なら、村々でも町々でも、国々でも戦争により解決していた過去があります。

ところが現代となると、これは第一次世界大戦か?第2次世界大戦か?と頭はぐるぐる回転します。

色々忙しく頭を巡らせながら、現代における家族の問題か?と、この家族内で起こる殺人について考えます。考える必要はなかったみたい、ただ現代にしただけかと・・・

罪と罰ラスコーリニコフは悩みに悩むけれど、娼婦ソーニャの自己犠牲の生き方に心を打たれ、最後は自首することを決めます。

人としてのヒューマニズムがあり救われました。

この家族はそれがなく、堂々巡りをして、それぞれの記憶まであやふやになり・・・

何が言いたいのか、わからない・・・(私には・・・です)

この新国立劇場で、観た「1984」は私には最低の作品でその次にくる作品だと思い、中々感想も書けませんでした。

書くに当たって、調べてみるとなんと、舞台の作者ロバート・アイクは「1984」の作者と同じ人物でした。

悩むことはなかったですね、私はこの人の舞台は好きではありません。

1984」(次にくる監視と密告の社会への警告かな?)のリンチのシーンは、まるで観客が加害者かと思わせるような作りで、不愉快でしたから、もう観ないと決めていました。

役者たちは良かったです。生田斗真さんは出ずっぱりでセリフも多かったですが、健闘していました。

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中でも女性陣3人の演技は素晴らしく、左は野性的な女性を演じられた、元宝塚出の音月桂さん、真ん中は趣 里さんで、お父さんが水谷豊さん、お母さんが伊藤蘭さんです。少し歌うシーンがあって、テープか?と思いましたが、勿論生で、綺麗に響く歌声でした。

左がお母さん役の神野三鈴さんで、難しい役どころでしたが、熱演でした。素晴らしかったです。