るりとうわた

日常をつづる

アカデミー賞2作品

第83回米アカデミー賞で作品、監督、主演男優、脚本賞を受賞した「英国王のスピーチ」を先週、アカデミー賞で主演女優賞を獲得した「ブラック・スワン」を昨日観てきました。

英国王のスピーチ
あらすじ: 幼いころから、ずっと吃音(きつおん)に悩んできたジョージ6世コリン・ファース)。そのため内気な性格だったが、厳格な英国王ジョージ5世(マイケル・ガンボン)はそんな息子を許さず、さまざまな式典でスピーチを命じる。ジョージの妻エリザベス(ヘレナ・ボナム=カーター)は、スピーチ矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ夫を連れていくが……。
キャスト・スタッフ
監督
トム・フーパー
製作総指揮
ジェフリー・ラッシュ 、ティム・スミス 、ポール・ブレット 、マーク・フォリーニョ 、ハーヴェイ・ワインスタインボブ・ワインスタイン 原作

音楽
アレクサンドル・デスプラ
    脚本
    デヴィッド・サイドラー

ジョージ6世は現イギリス女王エリザベス2世のお父さんの実話で歴史の勉強になりました。
「王冠を賭けた恋」といわれた兄のウィンザー公が退官する時の歴史の背景もよくわかります。
ナチスヒットラーの煽るような演説に対比して映像に映るきつ音障害を抱えた内気なジョージ6世ですが、本当にまじめで、真摯に国民のことを考え、よき国王としての責務を果たそうとします。
その姿がこの映画では一人の人間の姿として描かれますが、それは奥さんが見つけてきたスピーチ矯正の専門家ライオネルとの出会いが大きいのです。
彼は国民と皇室と言う関係でも、患者と医者と言う関係でもなく、地位も立場も関係がない同等の人間としての関係をかたくなに要求します。
スピーチの会場にも友人としての同席を求めます。
ジョージ6世は一度はそういう関係を絶つのですが、兄の退官で、国王としてのスピーチのため、再度ライオネルの治療を求めます。
口汚くののしる言葉はどもらずに次々と出るのに、その焦りが人ごと思えなかったり、微笑ましくも感じたりします。
人は一人で生きているのではなく支えあい、おのれが真に解放される場所が必要なこと。
家族の支えや心を開ける関係があってこそ、この時代の大役をこなすことが出来たのだと、心温まるものを感じることが出来ました。

ブラック・スワン
あらすじ: ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属するバレリーナ、ニナ(ナタリー・ポートマン)は、踊りは完ぺきで優等生のような女性。芸術監督のトーマス(ヴァンサン・カッセル)は、花形のベス(ウィノナ・ライダー)を降板させ、新しい振り付けで新シーズンの「白鳥の湖」公演を行うことを決定する。そしてニナが次のプリマ・バレリーナに抜てきされるが、気品あふれる白鳥は心配ないものの、狡猾(こうかつ)で官能的な黒鳥を演じることに不安があり……。
    キャスト・スタッフ
監督
ダーレン・アロノフスキー
製作総指揮
ブラッドリー・J・フィッシャー 、アリ・ハンデル 、タイラー・トンプソン
、ピーター・フラックマン 、リック・シュウォーツ 、ジョン・アヴネット
    原作

音楽
クリント・マンセル
    脚本
マーク・ヘイマン 、アンドレス・ハインツ 、ジョン・マクラフリン

この映画は怖いですね、淀川長治さんばりに「怖いですねえ、恐ろしいですねえ」と連呼したいです。(笑)
彼女にしか見えないもの(幻覚)を画面で観客も見ながら進むという感じで、どこまでがリアルで幻想なのか境目がわかりません。
彼女には友人や恋人はなく、仲間は主役を競いあう敵同士で、誰も信じることが出来ません。
唯一の理解者の母も、かつてはバレリーナーで娘に夢を託して辞めたということを知り、娘への期待が重荷となって迫ってきます。
監督から、白鳥は完璧だが、自分を解き放たない限り黒鳥は踊れないと言われ、回りからも自分自身からもどんどん精神的に追い詰められていきます。
あの「レオン」で子役だったナタリー・ポートマンの美しい表情と演技に引き付けられて、画面を見てしまうのですが自傷行為があったりと怖いです。
舞台の初日、彼女は見事に、漆黒の黒鳥に変貌を遂げ、別人かと思うほど、実際画面を見ていても別人なのでは?と思うぐらいで、黒鳥を踊ります。
最高の舞台で、彼女は真に母親からも自分の殻も解放され笑みを浮かべます、そしてそれが最後のステージとなります。
それが「白鳥の湖」の最後ともリンクしているようで、作品として上手くできているし、ナタリー・ポートマンの演技がすべてを引っ張っていきます。
アカデミー賞主演女優賞に相応しい映画でした。
ただ「英国王のスピーチ」と真逆な映画で安らぎがなく、もう二度目は見たいくない映画でした。
でも映画って面白いですね。と淀川長治さんばりに(笑)