るりとうわた

日常をつづる

映画2本(ネタバレあり)

一気に冬がやってきましたね、灯油を買ってきて一昨日からストーブをつけ始めました。
例年より早い気もしますが、もう11月も終わりですから、こんなものでしょうか。

先日暇な日があったので、映画を観てきました。
もちろん1本のつもりで行ったのですが、2本観てしまいました。
その1本目は「終の信託」です。


終の信託
監督:周防正行
原作:朔立木の同名小説
脚本:周防正行

出演:草刈民代役所広司浅野忠信大沢たかお・中村久美

1997年、天音中央病院。折井綾乃(草刈民代)は、患者からの評判も良い、呼吸器内科のエリート医師。しかし、長い間、不倫関係にあった同僚医師の高井(浅野忠信)に捨てられ、失意のあまり自殺未遂騒動を起こしてしまう。そんな綾乃の心の傷を癒したのは重度の喘息を患い入退院を繰り返していた江木秦三(役所広司)の優しさだった。綾乃と江木は心の内を語りあい、医師と患者の枠を超えた深い絆で結ばれる。
しかし、江木の病状は悪化していった。自分の死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に懇願する。「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にしてほしい」と。
2か月後、江木は心肺停止状態に陥る。
江木との約束通り延命治療を中止するのか、患者の命がある限り延命の努力を続けるのか…。
「愛」と「医療」の狭間に揺れる綾乃は重大な決断を下す!
3年後、その決断が刑事事件に発展する。検察官・塚原(大沢たかお)は綾乃を殺人罪で厳しく追及。綾乃も強い意志でその追及に応える…。

これはある女医さんが患者さんを安楽死させたことが、殺人罪に問われたという川崎事件を元に、現役の法律家が書いた小説を映画にしたということで、この事件は同じ神奈川県に住んでいるということもあり、良く記憶しています。
当時は医師に口頭で伝えられたということで、最近では延命治療に関しても、細かい検査まですべて署名するやり方になり、チーム医療とかで、こういう問題も少なくなったのでは?と感じますが、どうなんでしょう。
ただ映像を見ていて、実にリアルで、だんだん寒くなってきます、こんなすごい問題(終末医療)をよく映画にしようと思ったな〜と感じながらも、目を逸らすこともできずに見入ってしまいます。
話は3時に検察庁に呼び出された元女医が2時半ごろに着き、「待たしておけ」という検察官の言葉で、待合所で待つ間に回想する形で、話は進みます。
最後に一応家族に承諾を得た形でチューブを抜き、鎮静剤投与、筋弛緩剤投与により心停止に至る経過が描かれます。
そして3年後に訴えられ、長時間待たされた上に取り調べが始まります。
実は本当に怖いのはここからなんです、患者と医師の心の触れ合いや、まあそこまで一人一人の患者には接しておれないだろうとは思いますが、人間同士の交流が描かれていて、そこから一転して、仕事ってこうやって片づけるんだと言わんばかりの大沢たかおの強権ぶりが凄いのです。
検察官の役ですが、大沢たかおが上手くて怖すぎです、始める時間を遅らしておいて、6時に約束があるから帰りたい、注意書きに申し出て良いと書いてあったと言えば、医師を辞めたのに患者が待っているわけがなく、こちらは仕事だ、一応聞いておく、早く帰りたければ、署名捺印して終わりにしろと強要、上手くはめ込んでいくさまがこれぞ国家権力か?と怖くなります。
被疑者、被害者という言葉にも疑問のまま、検察官の聞かれたことだけに答えよと言われ、自発呼吸はあった(?)、致死量の薬を投与した、として殺人罪で手錠を掛けられます。
そして手錠を掛けられ連れて行かれる後ろ姿で、映画は終わります。
それがポスターの写真です、そこに、懲役2年執行猶予4年、61冊の病状日記が見つかり、そこに、早く楽にしてほしいことが明記されていた。と字幕で出ます。

とにかく、見終わっても寒くなる映画(厳しい内容)で、後を引きます。
このまま現実に帰れない気がして、まだ2時半なので、もう一本観て帰ることにしました。(笑)
始まる時間と、近所の方が観て面白かったと言っていた「のぼうの城」にしました。
終の信託」はほんとうに後を引く映画で、家に帰って考えたことはまた下で少し書きます。

のぼうの城
監督 :犬童一心樋口真嗣
脚本 :和田竜
出演: 野村萬斎市村正親佐藤浩市 ・永倉奈々・成宮寛貴鈴木保奈美山口智充上地雄輔

あらすじ: 天下統一を目指す豊臣秀吉は関東の雄・北条家に大軍を投じるも、その中には最後まで落ちなかった武州忍城(おしじょう)と呼ばれる支城があった。その城には領民からでくのぼうをやゆした“のぼう様”と呼ばれ、誰も及ばぬ人気で人心を掌握する成田長親(野村萬斎)という城代がいた。秀吉は20,000の軍勢で攻撃を開始するが、将に求められる智も仁も勇もない、文字通りのでくのぼうのような男の長親は、その40分の1の軍勢で迎え討とうとする。

この映画の水攻めのシーンが津波のシーンと被るということで、東北震災があったので1年間上映が延期された映画です。
ただ本当に水攻めのシーンはTVニュースしか見ていない私でも、十分津波を思い起こさせるシーンで、辛く感じますね。

少数が多勢に、勧善懲悪ときたら、たいていの日本人好みの映画です。(笑)
1本目の映画が内容もそうですが、館内も寒くて、震えながら見たのですが、こちらも人数は少ないのですが、映画館を変えたので、暖房が利いていて、何度もほんの少しですが寝てしまいました。(笑)
石田三成役の上地さんを見て、この方役者だったんだと気がついたり、とにかく若いころの石田三成の話なんです。
城から眺める2万の軍勢はやはりCGですが、仕方ありません。
田楽を舞うシーンはさすが野村萬斎さんです、この役に適任ですね。舞台でも何度か拝見していますが、声も踊りもメイリハリが利いて上手いです。
芝居は佐藤浩市さんが引っ張っていく感じがしました、貫録が出てきましたね。
農民とお城が一体となって戦い、最後は降伏という形にはなりますが、これが史実だというのですから素晴らしいです。
最後にNHK大河ドラマよろしく、当時の石田堤が一部残っている史跡の紹介や現在の町の様子が流れました。


さてまた「終の信託」の話ですが、家に帰ってまで後を引く映画で、公式サイトで、「これが周防監督が描くラブストーリ」と書いてあるのです、

果たしてこれはラブストーリなのか?と考えると、ラブでなくても、男女を問わず人生観や価値観が共感できる人というのはいると思います。
それが夫や妻なら最高ですが、この映画の場合はそうでなかったということで・・・、という感じが私はしたのです。
まあ単なるヒューマンとも言えませんでしたが・・・
ただラブストーリーとなると、じゃ3年経って訴えたのは奥さんということになりますよね。
それは嫉妬?復讐?、おとなしそうに見え、自分で何も決められない感じで、夫が「妻は強くない、親の介護をしていて、また自分の介護と引き続き苦労を掛けたくない」と気遣っていましたが、そっちのラブも問題になりますよね。

周防監督の意味深な発言も見つけました。(笑)
「最後に一つ、僕がこのシナリオを書いていて驚いたことがあるんです。原作にも映画にも『ジャンニ・スキッキ』というオペラが登場しますが、この物語のことを調べてみると「こういうからくりだったのか……」と、原作小説のもう一つの意図が分かるはずです。僕が味わったあの感動を、皆さんにも感じてほしいのでぜひ調べてみてください。」と書かれていました。
この映画の中で、女医が落ち込んでいた時に、元気になるようにと江木秦三がオペラのCDを貸してくれ、アリア「私のお父さん」という曲が喜劇なんだと話してくれるのですが。
このプッチーニのオペラは修道院に全財産を寄付すると亡くなった大富豪の親族にいつも馬鹿にされていたジャンニスキッキが、娘と結婚の約束をしている婚約者がこの親族の中にいて、親族達が遺産を相続したいと言うので、知恵を授けて欲しいと法律に詳しいジャンニスキッキを呼びに来ます。
娘はこのアリアを歌い、私は彼と結婚するのにお金が欲しい、でないと川に身を投げてしまうと歌い、ジャンニスキッキは協力をすることにし、大富豪に化けて声色で医師をだまして返し、公証人を呼んで、新しい遺言状を伝え、親族達に公平に分配した。かと思えば、肝心の高価なものは自分のものにしてしまい、娘たちは幸せになるという復讐劇だと思うのですが・・・
それに裁判に掛けられてから61冊の病状日記が出てくるのもおかしいです、入院しているときから付けていたのは奥さんも知っていたはずですから。(夫に頼まれて日記を手渡す画面がありました)
この人の生殺与奪の権は、あなたではなく妻の私が握っているの・・・(?)
究極のラブストーリーに対する、これは奥さんの復讐劇?それこそ究極のラブストーリー?というのは、取り過ぎかな〜。(もちろん小説の話ですが)