るりとうわた

日常をつづる

一日2本立て鑑賞(ネタバレあり)

昨日は夫がゴルフの日で、朝から早起きしていました、ゴルフの日は自分で朝ごはんを食べて出て行くということになっているので、私はゆっくり寝ているつもりでした。
ところが目が覚めてしまい、5時ごろから私も起きる羽目になりました。
早起きは三文の徳と言いますから、洗濯機を回して、いつもは習字の清書をするのですが、8月の課題は8月にやればよいし。
なら映画に行こうと思い、チケット検索をしました。
絶対これを観たいという映画もないのですが、時間がたっぷりあるので、2本立てにしてチケットを予約しました。

予約を入れたからには行くしかないと、追い込む策です。(笑)
早くに洗濯物も干せたので、8時半には家を出て電車に乗り向かいました。

1本目は宮崎駿監督の話題の「風立ちぬ」です。
ジブリ作品は大体テレビで見るので、映画館で見るのは「もののけ姫」以来です。

解説: 宮崎駿監督がゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメ。美しい飛行機を製作したいという夢を抱く青年が成し遂げたゼロ戦の誕生、そして青年と少女との出会いと別れをつづる。主人公の声には『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明監督を抜てき。ほかに、瀧本美織西島秀俊野村萬斎などが声優として参加する。希代の飛行機を作った青年の生きざまと共に、大正から昭和の社会の様子や日本の原風景にも注目。

あらすじ: 大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが、菜穂子が結核にかかってしまう。
監督 宮崎駿
製作総指揮 − 原作 宮崎駿
音楽 久石譲 脚本 宮崎駿

もう描写が素晴らしい、画面の隅々にまで描かれた、日本の風景や、関東大震災の町の家々まで、もう渾身の作だというのが良くわかります。
主人公の幼い頃からの夢、飛行機作り、しかも美しい飛行機を作りたい夢を実現していく過程が描かれています。
もうこれはこの時代を生きてきた人たちにとっては、「Always 三丁目の夕日」が昭和30年代なら、「風立ちぬは」大正から昭和の第二次大戦までの懐かしい原風景が見られます。
ということは親世代にとっては懐かしくてたまらない映画ではないでしょうか。
しかも美しい飛行機を、美しい彼女を得て、夢の実現へと向かいます。
あえて、美しくは描けない戦争そのものの描写は避けたということかも知れません。
戦争中に、きっと軽井沢をイメージしての避暑地の彼女との出会い、会社からも政府からも開発を期待されていた身分での洋行とその地での体験は、庶民の暮らしとはかけ離れていたと思います。
こういう中で、夢に突き進むことが出来たということです。
これらの描写にここまで、こだわっておれるのに、主人公の声が、何故若くないのか、これが残念でたまらなかったです。
逆に言えば、こだわり過ぎての庵野秀明監督(『エヴァンゲリオン』)の抜てきだったという感じがします。
私は偶然にも、日テレでのジブリスペシャル番組を見て、主人公の声優が庵野秀明監督で、苦労されている場面を見てしまいました。
主人公の声を聴くたびに、庵野秀明監督の顔が浮かびました。消しても消しても声が演じてくれないから出てきて、困ってしまいました。(笑)
他の声優さんも知っていましたが、誰一人として、絵の顔以外の顔は浮かんできませんでした。
せめて、主人公と同じ世代の若い方にやっていただきたかったです。
戦争の場面は描かれず、最後の方で、ゼロ戦は1機も戻ってこなかった、そして、飛行機が破壊され、山積みのシーンが映り、「生きて」と続いたように思います。

戦争の絵はこの1枚だけだったと思いますが、15分の空き時間で、次に移動して始まった映画「終戦のエンペラー」は、焼き尽くされた街、落とされた原爆からの悲惨な映像から入ります。
これは日本人が入っていないと出来ない作品だと思いました、
ちょうど、毎日新聞に載った評から紹介したいと思います。

ラスト サムライ」(2003年)や「バベル」(06年)などを手がけ、米ハリウッドで活躍する日本人プロデューサー・奈良橋陽子さんがプロデュースした歴史大作「終戦のエンペラー」が27日に公開される。昭和史の中で埋もれていた米国人が主人公。今作を見ながら、日本の戦中・戦後の分岐点に立ち会うような体験ができる。なお、奈良橋さんの祖父にあたる関屋貞三郎宮内次官を、今年5月に亡くなった俳優の夏八木勲さんが演じている。

 第二次世界大戦終結した1945年8月、GHQを率いるマッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズさん)が日本に上陸した。A級戦犯の逮捕が始まり、戦争責任者の追及が始まった。部下のフェラーズ准将(マシュー・フォックスさん)は日本文化の専門家で、戦争における天皇片岡孝太郎さん)の役割を探るよう、マッカーサーから命じられる。連合国側は天皇の裁判を望んでいたが、マッカーサーの意見は違った。フェラーズは大学時代、日本人留学生アヤ(初音映莉子さん)と恋愛関係にあり、彼女が日本に帰国後もずっと思っていた。愛するアヤの国・日本を理解しようと必死なフェラーズだったが、調査がいき詰ってしまう……という展開。

 天皇陛下マッカーサーが並んだ有名な写真がある。あの写真に至るまでの道のりが、実在した米国人フェラーズの視点で描かれる。日本にとって重い歴史がフェラーズの恋愛物語と並行して進むエンターテインメント作だ。フェラーズが日本人の精神について理解を深めようとする姿が、愛する彼女への思いと重なって、自然に感情移入ができる。この主人公がいなかったら、一体どんな日本になっていたのだろうか。証人が口を閉ざしたり、自殺していくという困難が続く中、「天皇陛下に会うしかない」というマッカーサーの判断が下される。皇居を訪れるシーンは緊張感が張りつめたいいシーンだ。「ロード・オブ・ザ・リング」3部作でアカデミー賞美術賞を受賞したグラント・メイジャーさんが手がけた今作の美術がリアリティーを生み出していて、焼け跡の風景もリアルだ。ストーリーの描き方は感情におぼれていないのに、心が揺さぶられる映画だ。26日から丸の内ピカデリー(東京都中央区)ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
監督ピーター・ウェーバー
製作奈良橋陽子ゲイリー・フォスター野村祐人ラス・クラスノフ
出演者: マシュー・フォックス, トミー・リー・ジョーンズ夏八木勲, 西田敏行, 片岡孝太郎, 中村雅俊, 火野正平, 羽田昌義, 伊武雅刀, 桃井かおり, 初音映莉子,

アメリカが描く、日本はどんな感じ?的お手並み拝見風だったつもりが、意外や引かれる、はまっていくのです。
ヒューマン関係が上手いというか、主人公のフェラーズ准将と上司のマッカーサーの関係や、同僚との関係、また運転手兼通訳の日本人との関係、そして元恋人の日本人女性との関係、そのつてで、
軍人から、日本人の精神について学ぼうとする。
日本人の私でも、日本人の精神は説明し難いですよね。何しろ言いたいことを中々ズバリと言わないというか言えなかったのですから、奥ゆかしいの言葉では済まないですよね。
その辺を軍人役の西田さんが、建て前と本音に分けて話します。
とにかく、日本に来て10日間で、天皇を裁判で裁くがどうかを決めなくてはならいないのです。
戦争にどう関与して来たか、証言を集めようとしますが、中々出てこない、努力の甲斐あって少しずつ分かります、御前会議で、降伏に対する意見が3対3に分かれた時、天皇が日本を救うために降伏してくれ、と発言したこと。
国民にその降伏を呼びかけるために天皇が録音したテープを、奪いに来た軍人たち、少しずつ明らかになって行きます。
そして証拠の記録はないけれど、クライマックスに向かいます。
不覚にもほろりと来ました、日本の俳優も上手いです、夏八木勲さんも凄くよかったです。
最後の、フェラーズ准将と運転手の対等の関係は良かったです。
フェラーズ准将はずっと誰に対しても対等の人間関係で行動していました、こうして人間が面と向き合えば、文化の違いを乗り越えて、分かりあえるということを教えられた気がします。
風立ちぬ」は日本人映画的、見る人によってとらえ方は変わるでしょう、そこまでしか伝えていないから、
終戦のエンペラー 」はヒューマニズムが貫かれています、アメリカ映画で見せられた日本に、胸が詰まる思いがするなんて、思ってもいませんでした。けど美しいものも観たかった。
足らないところを補い合った、この日の2本立ては大成功でした。