るりとうわた

日常をつづる

「マクベス」(ねたばれあり)

マクベス

作 : W・シェイクスピア
翻訳 : 松岡和子
演出 : 長塚圭史
出演 : 堤真一 / 常盤貴子 / 白井晃 / 小松和重 / 江口のりこ / 横田栄司
市川しんぺー / 池谷のぶえ / 平田敦子 / 玉置孝匡 / 福田転球
斉藤直樹 / 六本木康弘 / 縄田雄哉 / 伊藤総 / 山下禎啓 / 中嶋しゅう
三田和代 / 風間杜夫
菊地雄人 他

快進撃を続ける長塚圭史。5月にシアターコクーンで書下ろし新作『あかいくらやみ〜天狗党幻譚〜』を上演。多層的で重厚な戯曲。俳優の魅力を余すところなく発揮した演出が光り、大きな話題となりました。13年の締めくくりとして、最大の話題作がついに登場!!演劇ファンが待ち望んだ、シェイクスピアへの初挑戦!その作品は…四大悲劇のなかでも、傑作の呼び声が高い「マクベス」!!
タイトルロールには、俳優としての円熟期を迎えながらもその評価に安住せず挑戦を続ける堤真一!!長塚圭史とは待望の初顔合わせとなります。マクベスを翻弄する毒婦として描かれることが多いマクベス夫人ですが今回は<マクベスの欲望が伝染した被害者でもある>として描かれます。クールな美貌と共に、近年、様々な役柄でその豊かな感性を発露している常盤貴子が挑みます!その圧倒的な存在感と色気で客席を虜にする名優、風間杜夫!!演出家としてのみならず俳優としても得難い個性を発揮する白井晃!!舞台に奥行きを与えるベテラン中嶋しゅう!また、小松和重横田栄司市川しんぺー池谷のぶえ玉置孝匡福田転球 等、心強い面々が参加!そして、キーマンともいえる魔女たちには、日本を代表する舞台女優、三田和代!映画での活躍も目覚ましい江口のりこ!毒のあるユーモアが魅力の平田敦子が決定!!異彩かつ刺激的なキャストたちが観客と共犯関係を結び、祝祭的な「マクベス」が誕生します!ご期待ください!!

これは12月の中頃になって、この期間は時間的に余裕があるので、急遽取ったチケットで、こんな間際でも取れて、ラッキーだと思いました。
今までbunkamuraの会員は年会費を払っていたのですが、今年はその会費が返却され、無料となり、誰でもweb上で登録すれば会員になれチケットが買えるようになりつかうそうですました。
帝劇などの東宝関係も早くから、無料でチケットが取れるようになっていましたから、年会費を無料にして客数を増やすためだと思います。
不景気になると、こういう娯楽費は削らざる得ないですから、私も今回は初のコクーンシート¥5000にしました。
もともと「※コクーンシートは、ご覧になりにくいお席です。ご了承の上、ご購入ください。」と但し書きのあるお席ですから、舞台が観切れる席か、舞台のはるか彼方かの覚悟をしました。

で、会場に入ると、何と、センターステージ形状で、通常の前半客席部分に舞台が作られ、いつもの舞台があるところは客席になり、舞台はその中央です。
私の2階のベランダ席のコクーンシートの真下が舞台というラッキーさ加減に大喜びです。得した気分です。(笑)
こういう形状の舞台ははじめてです。
舞台は小さめの六角形をしています、床板も荒目の板敷で、案内人の俳優がヒールの方は気を付けるようにと注意がありました。
その俳優も顔に白塗りをしています、それも中途半端に剥げかけた白塗りです。
その白塗りをばっちりつけて、ちょっと異様な雰囲気の黒っぽい服の女性が客席に坐ります。(そういう演出なんですね)
芝居の始まる前に2人の男性俳優が舞台に立ち、諸注意をすると言います.
するとその客席に坐った異様な格好の女性みたいな人が、「それって長くなるの?」と聞きます、それに答えると、また別の方向から、そのあとももう一人「あんたたちの名前なんかどうでもいいのよ」と次の進行を催促します。
そういえば3人と言えば、マクベスに出てくる魔女たちですよ。もうすでに芝居に導入させられているようです。
なるほど異様で、ちょっと恐ろしげな魔女たちで、髭まである背の高い人や、まるでマツコデラックスのような雰囲気の人やらで、最初は女装かしらなんて思いましたが、その中に三田和代さんもいるのですから女性です、びっくりしました。
客席に、2〜3席ごとに肘掛の下に筒が括り付けられ、緑色のビニール傘が入れてあり、それを舞台中に観客が使うらしく、「用意して」で取り出し、練習をしました。
どうやら参加型の舞台のようで、これは寝るわけにはいかないみたいです。(笑)

それに実際舞台が始まると、いろんな客席のドアから人が登場したり、ところどころ空けてある席に座って演技をします。
その荒い板敷の下から、ライトが灯り、舞台が浮かび上がるようにもなっていて、さらに舞台の下ににまで階段があり、狭い舞台を、上から下へ、移動して空間を広げたり、
その舞台の下も奈落になっていることに驚きました、通常は客席があるわけですから。
それにちょっとおどろおどろした場面のセリフ回しになると、舞台の下の床に造られている2つの水道の蛇口がひねられ、じゃーと水の流れる音が効果音になります。
中々面白い舞台設営でした。

そして、芝居が始まると、ほとんどの男性、圧倒的に男性が多いのですが、顔の上半分が白塗り状態で、目の周りに黒のアイラインを入れている感じですが、次第にこれが気にならなくなります。
現代と芝居との区切りかも知れません。
白塗りをしていないのはマクベス夫人の常盤貴子さんだけかもしれません。

それに衣装が、背広やコートや革ジャンなど現代紳士スタイルで、皆手に傘を持っています。
現代衣装のマクベスなのかな?イギリスの話だから英国紳士風に傘なのかも知れないと、いろいろ想像するのは楽しいです。
でも後で、兜や鎧も出てきます、王のマントもつけるし・・・
その傘は、剣のようで、それで戦い、傷つけあっていました。

セリフは松岡和子さんの訳にほぼ忠実でした。
もちろん生声で、久々に芝居らしい芝居に遭遇という感じがしました。
常盤さんは紅一点的存在で、とにかく魔女たちが迫力があるので、さらに衣装のドレスがブルーからモスグリーンに見える色に赤いベルベットが上に付いていて、クリスマスカラーという印象で、胸も開いたドレスで、さらにあでやかでした。
で、キスシーンがあったり、マクベスの上に乗っかったりと、ちょっと今までにないマクベス夫人の感じがしました。
ただ圧倒的に男性っぽい舞台で、そうそうたるメンバーで、皆さんセリフも明瞭ですから、男性優位という感じで、常盤さんのセリフは迫力負けします。(まだ舞台経験が少ないのかもしれない)

予言に人生を絡め取られたマクベス夫妻は凋落していくのですが、緑の傘は、魔女たちの予言で、「マクベスは決して敗れない。バーナムの大森林がダンシネインの丘に向かって攻め上がってこない限り。」というのがある。
その森が動いたという仕掛けになります。(笑)
ただそこまではいいのですが、そのあとマクベスが殺されてから、大きな首をかたどった(ですから顔です)ものを大きな風船をまわすがごとく客席を回すのですが・・・・
これは、どうだかな?という感じがします。
ここまで、けっこう正統派芝居できて、いいなあと思っていたのに、これはない方が良かったと思いました。
結局観客を民衆に例えて、強権を用いたマクベスを笑いものにしている図なんでしょう、ようするに「観客と共犯関係を結び、祝祭的なマクベスが誕生します。」なんだと思います。
ただ観客にも意志があります。(笑)
まあ2階席にいた私は、まったくそれらを見ていただけです(傍観)からいいのですが、ちょっと興ざめしました。それまでが良かっただけに残念です。